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<超高齢社会×丸川珠代>
#7-4 科学的介護とは?AI化に必要なクオリティデータ「VISIT」「CHASE」

AI時代に必要になるのは「クオリティデータ」

(※この対談は2020年1月25日に収録されました)

山本 続きましては、オリンピックで盛り上がった後でも、日本は今超高齢社会に突入していて、実際もう28%の高齢化率になってきていますので、超超高齢社会ですね。21%が超高齢社会なのでプラス7%まで来ていて、これから社会が大きな変化を迎えていくと思うんですよね。

丸川 大きな構造的な変化を迎えざるを得ないですよね。今“まだ”28%と言った方がいいかもしれないです。というのは、これから高齢者の数はまだ増えて、2042年でピークになります。そのあと、高齢者の数は減るんですけれども、高齢化率は増え続けます。
つまり若い方の数が減るからなんですね。
今から20年でだいたい1000万人若い方が減って、そこから更にまた若い人が減るので、ここから先は若い人の数が減っていく、つまり社会の今まで担い手だとみなされていた現役世代が減っていくことに対して、どう向き合っていけばいいかということを考えなくてはいけないと。
当然活躍できる人には皆さん活躍していただかなければいけない。そのためにできることは何でもやる、という姿勢じゃないと、おそらく2060年に待っている高齢化率38%の時代にはとても対応できないと思います。日本は今すでに世界の先頭ですけれども、高齢化という意味ではこれから40年ずっと先頭を走り続けますから、高齢化の乗り越え方も世界最先端になります。

山本 なるほど。でも誰も見たことがない社会を日本が迎えて、それを乗り越えられたらすごいことですよね。

丸川 あらゆる国に人口ボーナス期と人口オーナス期があって、担い手と支えられる側の構造が逆転するという人口構造を社会の成熟とともに皆迎えていくわけですね。そのスピードが我が国はとても早かったわけです。中国も恐ろしいスピードで今それを迎えようとしている。一人っ子政策がそれを大きく、残念ながら寄与してしまった部分もあると思うので、今一生懸命緩和されようとしていますけれども、なかなか一旦道がついた人口の構造は、そう簡単に変わるものではないので、おそらく2040年代になってくると中国の高齢化というのは、いろんな形で世界に波及してくるんじゃないかなと思います。
その頃に私たちが今ここから20年培っていく高齢化を乗り越えるためのさまざまな知恵や技術を、ご提供できたら非常に素晴らしいなと思います。

山本 私も日本が超高齢社会を乗り越えたという経験が世界中の超高齢化を救う、つまり日本は世界の高齢化を救うという国になるんじゃないかと思っておりまして。

丸川 まさにおっしゃる通りですよ。例えば介護のシステム。ここまで整えられたのは我が国だけだと思います。

山本 おっしゃる通りですよね。

丸川 20年経って、いろんな議論をし、いろんな制度の改正や問題を乗り越えながらここまで来て、(山本社長も)まさに介護の事業を間近に持っておられる中で。

山本 そうですね、我々もITで支えている側ですけれども、非常に素晴らしい仕組みだと私も感じておりまして。

丸川 是非これを次の世代にしっかり手渡してあげたいと思いますし、そのためには今例えば介護の現場で一番問題になっている人手不足、担い手不足、これをどうにかして乗り越える支援を私たちが知恵を出していかなければいけないです。そのためには ICT の力を使うということは本当に重要だと思いますし、ICT を使うことで質を落とさないで省力化を図ることができるということが一番意義が深いと思っているんです。

山本 ありがとうございます。そう言っていただけると非常に嬉しいです。
でもやっぱりどの産業でも全部人がやるというのは限界があるので、人が得意なところを人がやって、コンピュータ・機械が得意なところは機械がやる。ロボットなども含めてだと思うんですけれども、そういう風になった方がバランスはいいですよね。

丸川 そうですね。人間が「人間ができること」に専心する、注力することができるようになれば、もっともっと新しい価値を生み出すことができるようになると思うんですね。おそらく介護の現場の皆さんは「この人がもっと自分が満足して心豊かに介護されている生活を送れるようにはどうしたらいいんだろうか」、あるいは「もうひと手間かけたらこの人はもしかしたら少し介護度が良くなるかもしれないのに、それをかける時間や余裕が今の現場にない」ということを嘆いておられるのではないかなと思います。
私の母も一時、老健の施設長をやっていた時がありまして。「入っている人のことだけ考えさせて欲しいのよ」と言われました。本当に心ある人は皆そこで介護を受けておられる方達が QOL (生活の質)を向上させることに注力したいと思っていらっしゃるはずだと思うんですね。

そういう中で申し訳ないことにこの春、「VISIT」というリハビリのデータを出していただくシステムに加えて、今度は「CHASE」という介護のケアの部分で、今介護を受けられている方がどのような状態かというデータを出していただくシステムを始めます。「科学的介護ということで、介護をやっていただいたケアと、その効果がどのようにその方の状態に現れたかということを科学的に分析できる土台をこの「VISIT」と「CHASE」というシステムを通じて介護の現場からデータをいただいて進めていきたいと思っています。

山本 私もその「VISIT」「CHASE」を非常に素晴らしいことだなと思っておりまして、やっぱり集め方とか標準的に決めていかないと、皆さんがバラバラの取り方をしていると、どうにも分かりにくいという所があると思いますので、そういったものが次の介護保険改定ぐらいから標準化されて全部集まってくると、そこから先5年後10年後にはすごいデータとして活用されて、より良い介護ができる状態まで行けるんじゃないかとすごく期待しておりまして。

丸川 ありがとうございます。

山本 リハビリと介護はすごく重要だと思いますので、今回もその「科学的介護」という言葉が具現化されて「VISIT」「CHASE」が生まれて、私も非常に楽しみにしておりまして。是非どんどん進めていただきたいなと思っております。

丸川 ここまでしっかりシステムを組み上げてできる国というのは、今のところ日本だけだと思うんですね。なによりデータが標準化されているという事は、日本中どこから集まったデータもきちんとクレンジングの手間をかけずに、データとして解析にかけることができることになりますので、できるだけ要望された項目を是非皆さんに、きちんと入れていただけるとありがたいなと思っているんですが。

こういう「ビッグデータ」ではなくてこれからは「クオリティデータ」を集めていく時代になると思うんです。もちろんデータを使っていらっしゃるから一番よくご存知だと思うんですが(笑)。今まではビッグデータも「なんだかよくわからないからたくさんデータを集めて、それを分析していくと何か出てくるんじゃないか」という時間が数年間あったけれども、本当に物事の流れは早くて、これからはいかに標準化され構造化されたデータを集めてきて、それを「クオリティデータ」として活用していくかが、介護の世界は今始まりましたけれども、医療の世界でも問われています。

山本 私はIT屋さんなのでビックデータ、ビッグデータと騒がれて、 AI、 AIというのがどんどん今騒がれているんですけれども、私よく言っているのですが、ビッグデータというのは結構ゴミも多くて、どれがゴミでどれが宝か見つけるのかすごく時間もかかり、クレンジングの作業ですごく労力を割いてしまったり。あと AI もなんとなく皆天才なんじゃないかと思っているんですけども、おそらく偏差値75のAIもいれば、偏差値がもう少し低いAIもおそらくいるという状況で、そこは変に人間に似ている部分があるんだなと思うんですけど、教師データと呼ばれる良いデータ群をどう集めるかにすごく時間がかかっていて、 AI が成長しないというのをすごく感じていますので。先生がおっしゃる通りクオリティデータをしっかり集められて、これを基礎として頭のいいAIが出来るっていうのがピシッできると、もう日本は世界に誇る良いデータを持っている国になっているという事ですね。

丸川 介護は始まって“もう”20年と思うかもしれませんが“まだ”20年で、これは医療の歴史に比べるとまだ短い社会保障制度です。だからこそ新しいデータを収集する仕組みを比較的に皆さんのご理解をいただいて進めることができました。

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