<超高齢社会×政策>
#5-5 「介護保険制度」で超高齢社会を乗り切れ!アジア各国が日本に期待すること
アジアの国々は日本の課題解決を待っている
山本 介護事業者の今後のグローバル展開についてお話をお伺いできればと思います。
田村 今、日本政府は「アジア健康医療構想」という、元々自民党の参議院議員のたけみ先生の構想を、しっかりとフォローしながら進めています。アジアや日本の医療、グローバルヘルスをどうやって広げていくかという話で、日本はユニバーサルヘルスカバレッジが非常に進んでいるので、アジアの国々はそれを待っているんですよね。
それで日本の医療や医療制度をどのような形で広げていくか。もちろん薬もそうです。日本の薬の承認基準をアジアの方でしっかり確立して、安心できる医薬品をアジアの国々にも供給していく、ということも含まれています。もう一つは介護。日本は介護保険制度という非常に素晴らしい制度があって、これからアジアの国々は日本を追いかけて高齢社会・超高齢社会に入っていく。
日本・中国・韓国の3カ国の保健大臣会合を定期的にやっていますが、ここで大臣にお話をさせていただいたら、韓国・中国ともに超高齢社会の中で日本のこれからの介護を非常に期待していると。
山本 期待があるんですね。
田村 日本がこの介護制度で乗り切って、超高齢社会をうまく成功すれば、我々もそれを学びたいと言われているんですよね。
山本 かなり日本は先進的なのですね。
田村 先進的といいますか、超高齢社会をどの国よりも先に走っていますから(笑)実際問題、対応せざるを得ないので。それならば「日本の介護保険制度」をそのままアジアの国々に持っていけるのではないかと思っていまして。
これはある意味、日本の介護事業者の方々が世界へ貢献をいただき、経済的にも日本が豊かになれる大きな武器でもあるわけです。本質的に役に立たないものを売るわけではないので、世界・アジアの国々の課題を解決しながら日本も潤える。介護保険の方式や医療制度の方式をアジアの国に広げていこう、というのがこの「アジア健康医療構想」の考え方なんですね。
その中で人材はどうするんだという話になって、特に介護は本当にマンパワーが必要な分野で、ロボティクスを使って効率化するにしてもマンパワーがないと動かない。ちょうど今日本は介護人材が足らないじゃないですか。どこもかしこも足らない。
山本 そうですね、人手不足ですね。
田村 技能実習制度で海外から介護人材に入って来ていただいたり、特定技能制度も介護を作りました。もう一つ、入管法を改正しまして、介護福祉士の養成校に来て2年学校で勉強していただくと、介護福祉士の国家資格がもらえます。もらったらそのまま入管法改定で在留資格が与えられるんですね。家族の帯同も許されるのです。そういう方々に日本で学んでいただいて、介護エリートとしてアジアの国々、自国・母国に帰っていただく、と。
そこで日本の介護システムを動かしてもらう。今は外国人の力を借りないとこれから日本は大変なんですけれども、特に介護の世界は労働生産性が低いので、そんなに待遇が目覚ましくいいわけじゃなくて。もっと高度な人材・外国人が、日本に行くより他の国に行った方がいいということになってしまう可能性があるわけですよ。
山本 そうですね、他の国の経済発展がめざましいですからね。
田村 ところが「日本に来て介護を学んで資格を取れば、自国にエリートで帰れる」というルートを作ると「日本へ介護を学びに行こう」と来てもらえるじゃないですか。これは本質的に重要な話で、日本で使って使い捨てなんてことは失礼な話なので、アジアの方々にとって、自分の人生を考えた上で「日本でキャリアを積むことが自分の将来にとって自国でも幸せな生活が送れるんですよ」という道を作っていくのが、この「アジア健康構想」の一つの大きな柱にもなっているのです。
山本 そこも繋がっているのですね。そういう意味だと、外国人の方が来てくださって、日本で資格も取っていただいて、介護の現場で色々覚えて、戻った時に受け入れていた介護事業所が出店するチャンスに繋がるということですよね。この方がリーダーで行ってくださると。
田村 しかも日本式の介護の仕方を全部学ばれていますから。すぐ実践で使える。それで言葉の壁もありませんからね。
山本 すごくいいスキームですね。今海外・アジアで日本式介護は人気がありますね。ブランドになりつつある。日本の介護は株式会社がやっているところが多いので、ビジネスとして外貨を稼げる可能性が残されているということですね。
田村 日本もこれから超高齢社会で、一時ワーッと増えて、でもその後はまたしぼんでいきます。「じゃあ日本にチャンスがないじゃないか」じゃなくて、もっともっと先進的な介護の事業者が増えてきて「日本の後にはアジアに向かって、我々の介護で高齢者の方々に幸せな人生を送ってもらう」という目的意識を持って頑張っていただくことは、介護をやられる企業にとって充実した目的を持てるんじゃないのかなと思います。こういう点、もっともっと日本の介護事業者の方々、夢をもって頑張っていただきたいなと思っております。
山本 そうですね。日本の中だけでも2040年ぐらいまでずっと増え続けていく市場ですし、30年以降ぐらいからも本当にどんどんアジアが高齢化していきますので、新しい市場がどんどん広がってくる、ということですよね。今から外国人の方と一緒にお仕事をして、すごくグローバルな目線でお仕事をしていけば、ダイバーシティですよね。やっぱりみんなでダイバーシティを意識しながらやっていくのが、実は介護の未来を明るくしていきますね。
田村 これは各国の多分一番大きな課題になってくる部分を解決するということですから。日本が世界の課題を解決して、世界の国々に喜んでもらいながら豊かになれる。
山本 素晴らしいですね!それで日本人のプレゼンス(存在感)が上がって、尊敬される存在になっていけるかもしれないですね。介護職や医療職も非常に日本はレベルが高い。
田村 高いです。
山本 そうですよね。日本で一番頭のいい方はお医者様になる方が多いですし、介護職の方も学歴を持っていらっしゃる方が非常に多いので、世界の中ではトップクラスのレベルの高さを誇っているわけですので。ここにさらに外国人も働きに来てくださって、その後エリートとして帰国されて、母国のリーダーとしてさらに展開していただいて、日本式介護が世界にドンドン出ていく、というのが、日本の明るい未来なのかもしれないですね。
田村 期待しています。