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<超高齢社会×政策>
#5-4 「働き方改革」はなぜ始まったのか?本当の狙いとは?

人手不足、働き方改革、そしてワークライフバランス

山本 続きまして、超高齢社会における人手不足、働き方改革、そしてワークライフバランスについてお話を伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

田村 働き方改革をなぜやったかと言うと、まさに少子化と絡んできている話なんですね。日本人は、労働時間が長いことが美徳みたいな意識がずっとありました。結果、奥さんに子育て・家事を任せて、旦那は夜中に帰って来るみたいな家庭のモデルがずっとあって、結果的に奥さんは本格的に社会で働けない。
パート労働はやれるんですけれども、子育てと家事をやりながら。
そうなってくると当然、「1人目は育てられたんだけど2人目がちょっとキツイ」だとか、「2人が限界」だとか、「もう子どもは作らない方がいい」だとか、色々なお考え・価値観が出てくる訳ですね。

でも本当は、元々は子どもが欲しかったという方々が、家事や育児に追われて、「もういらない」だとか「1人だけでいいわ」というのは悲しい話で、子どもが欲しいと思われているご家庭で2人、3人、欲しい分だけ子どもを育てられるような環境を作ろうと思うと、女性に家事・育児を押し付けるのは無理な話なんですね。

ワークライフバランスを変えるというのは、一つは働き方改革で旦那さんが短い労働時間で6時、7時までに帰ってこられれば、家事や育児も可能になる。手伝うんじゃなくて、一緒に出来る。子どもの父親に対する愛情形成も変わってくる訳ですね。奥さんには、それによって「ここまでしてもらえるならば、2人目作ろうかな」だとか、「3人目育てようかな」という気持ちになっていただいて、少子化という大きな課題を解決していけるのではないかと思うのです。
そしてもう一つは、長時間労働しなくてもキャリア形成ができる労働環境になると、女性もパート労働じゃなくて「私もキャリアを積んで正規で働いて社会の中で自己実現をしていこう」となっていきますから。

これから少子化で生産年齢人口がドンドン減っていきますから、もちろん元気な高齢者の皆様方にも社会で色々な活動で参画いただきたいと思うのですが、女性も今まではパート労働だったものが正規で仕事をバリバリやりたい方々が、「私もこの労働時間で働いてキャリア形成できるならば正規で頑張ろう」という気持ちで働いていただく。
これから労働力が足りない中で、女性の能力を最大限社会の中で活かしていただけるんじゃないかという、この二つの側面があって、働き方改革を進めているんです。

ただ一方で、医療の現場は大変でして。急性期や産科の現場は、労働時間上限を決められてしまうと「これは大変だ、回らない」という話になります。そこは今審議会で色々な議論をしていますけれど、丁寧にやっていかなければならないと思いますね。
だから家庭の中で女性にしわ寄せが全部いってしまっている、そこで今度は逆に虐待が起こったり、夫婦間のコミュニケーションが取れないとなると、離婚に繋がったりしてしまいます。

山本 不幸せになってしまいますよね。

田村 そうなんです。離婚が起こると奥さんが子どもを抱えて、女性がひとり親家庭で生活をする。残念ながら、まだ女性が正規で活躍できる環境になっていませんから、そうなってくるとパート労働・非正規で働く、すると子どもの貧困に繋がってくるので。

山本 負のループがあるんですね。

田村 このワークライフバランスをしっかりと充実させていくことが、実は家庭がより幸せになっていくという意味合いもあるんですね。

山本 元々家庭・家族のために一生懸命お仕事を頑張っているはずが、仕事に集中することによって家庭が崩壊する負のループは本末転倒なんですけどね。

田村 本末転倒なんですよね。ですから働き方改革は非常に重要です。ただ一方で、働き方改革をやるとそれだけ労働供給量が減りますから、生産性を上げてもらわないと社会が回らない。
先ほどのAIやクラウドやICT、社会全体がこういう風なループに入るんですけど、実際問題そうなってくると、今度は女性に正規で働いていただくことになりますから、より保育施設を充実させていかなければならない。

山本 待機児童を無くしていく、と。

田村 まだ待機児童は無くなっていません。今私が大臣になってから待機児童を解消するために(保育の受け皿を)50万人分以上増やしましたけど、さらに今30数万人増やして、80万人以上の子どもたちが生活できるような、そういう保育の現場を作っています。

山本 もう保育の現場がそれだけ増えたのですね。

田村 今作っている最中なんです。いよいよお尻が見えてきているのですけれども。ただ待機児童が本当に解消されるかというと、なかなか難しくて。人の移動があります。つまりマクロではこれだけ女性が社会に進出した、その結果「これぐらい保育の受け皿を作らなければいけないね」となってくるのですが。
ミクロの世界では、地方では保育所の定員が空いてきても、若い人たちは東京に行きます。東京に大体年間12~3万人、10代20代の方々が来られる。するとその方々がまた結婚されて子どもが生まれますから、作っても作っても都会ではまた保育所の定員が足りないという話になってきます。

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